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「楽しく学ぼう!医療と福祉」みんなで支える地域包括ケア 第6回

 平成27年4月に行われた介護報酬改定において、介護保険制度が大きく変わることとなりました。要介護認定において「要支援」とされた方、つまり「介護予防」に該当する方は、平成29年度末までの移行期間を経て「介護予防・日常生活支援総合事業」へと移行されることが決まったのです。
 これは従来の「訪問・通所介護サービス事業」だけでなく、地域のNPO法人やボランティア等を幅広く活用し、要支援高齢者に対する生活支援を地域ぐるみで行っていこう、というものです。市町村などの地方自治体を主体として制度を構築していきますので、居住する自治体によって多様なサービスを提供していくことが可能になります。
 その根底にある考え方は、地域包括ケアシステムと同じです。しかし、厚生労働省が作成した「総合事業のガイドライン」には、「高齢者が支える側に回ることもある」と明記されています。一見すると「老老介護」などという批判的な言葉も聞こえてきそうですが、そういう制度を作ることになった理由には、以下のような背景が見え隠れしているようです。

1.少子高齢化
→ 現役世代の担い手不足
2.介護保険財政の窮乏
→ 消費増税の先送りや拡大を続ける国民医療費による社会保障財源の逼迫
3.介護分野の労働力不足
→ 介護離職ゼロを目標に掲げる

要支援者の在宅生活

さて、動画コンテンツの中で具体的なモデルとして取り上げたAさんは、介護保険の要介護認定で「要支援」となりました。Aさんのように「身体的に自立している」とはいえ、「日常生活に何らかの不便を感じている」という方は少なからずいます。

例えば、以下のような場面です。

  • 肩関節の稼働域が狭く、頭部を洗いづらい
  • エレベーターがない団地の上層階に住んでいるので、ゴミ出しが不便
  • 運転免許やクルマがないので、買い物に行くのが不便

介護保険を使い、ヘルパーさんが保険給付の業務として行うことができるものもありますが、できないものもあります。またできるとしても、保険給付の対象となる介護業務は、その範囲が限定される決まりになっているので、以下のような懸念点があります。

  • 買い物は、日常的に必要な食料品や生活必需品に限られる
  • 「ショッピングを楽しむ」という目的での買い物に同行してもらうことはできない
  • 自身が生活する居室やトイレ・浴室等の清掃は頼めるが、庭の草取りなどは頼めない
  • 自身の外来受診を目的とした送迎は可能だが、家族のお見舞いや受診時の付き添いはできない。また、送迎の出発地と目的地も限定される

訪問介護だけを見ても、保険給付の対象となる介護サービスの内容は、非常にたくさん区分されています。利用する要介護者や要支援者は、それぞれの要介護(支援)度によって決められた、保険給付の限度額範囲内で、「具体的にどんなサービスを」「一回あたりどれだけの時間で」「週または月に何回」受けることが適切かを、ケアマネージャーが判断しケアプランを作成します。

動画コンテンツに登場するAさんの場合は以下のようになりました。

  • 予防訪問介護費Ⅰを適用
  • 月額11,680円(保険給付総額)の定額制

≪ケアプラン≫ 一回の訪問でおおむね30分

  • 洗濯物干し
  • トイレ掃除
  • お風呂掃除

 洗濯については、衣類を洗濯機に入れ洗剤を投じて全自動のスタートボタンを押す、というところまではAさん自身で可能なので、ヘルパーさんはこれをベランダに干すことを請け負うという契約になっているようですね。場合によっては、「月に一度晴れた日を使って」「Aさん自身が使う布団をベランダに干す」という内容を追加することもできます。
 具体的にどういう援助が必要なのかをしっかり検討した上で、ケアプランは作られます。またその際、ご本人やご家族の意見も聞いてくれますし、要望が介護保険の給付として認められるかどうかについて適切に判断してくれますので、遠慮なく願い出ることができます。

 冒頭でご紹介した「介護予防・日常生活支援総合事業」では、介護保険の給付対象とはならないものの必要だと思われるような生活支援について、市町村が「多様なサービス」として独自に設定することができるようになります。そのため、それだけきめ細かい生活支援を実現できるようになるものと思われます。
しかしそれは、市町村によって提供できるサービスに格差が生じることにつながりますので、そのあたりの矛盾をどう埋めていけばよいのか、さらに突っ込んだ議論が進められるものと思われます。

 次回動画コンテンツでは、Aさんのように退院後直接在宅に移行できない場合に利用できる介護施設について、施設の種別や主な特徴などについて解説します。高齢者住宅や介護施設に関する制度も、時間の経過と共に変わりつつあるので、これを機にしっかりとチェックしてみてください。動画やWEBサイトと合わせてご覧いただければと思います。

【医療監修】
医療法人社団悠翔会
医師 理事長・診療部長
佐々木 淳