Media Contents Factory

Rx-Channel

「楽しく学ぼう!医療と福祉」みんなで支える地域包括ケア 第3回

 前回は「地域包括ケア」について、入院から在宅に向けた“医療機関側の動き”を中心に説明しました。また同時に、「医療機関」「入居型介護施設」「在宅型介護施設」「地域のケア行政」という4つの分化された機能が連携して高齢者の在宅生活を支える、地域包括ケアシステムの全体像についても図式を交えて解説しました。
 地域包括ケアシステムは、入院から始まります。そのため、すべての人が入院するわけではありませんが、動画コンテンツに登場している、大腿骨頸部骨折で入院したAさんをモデルとしています。
前回Aさんは退院となり、いよいよ在宅生活に向けた様々な準備が始まります。ここで一度、Aさんのプロフィールとこれまでの経過をおさらいしておきましょう。同時に、今後の展望についてもご紹介したいと思います。ぜひ動画コンテンツとあわせてご確認ください。

Aさんのプロフィール
  • 都内に住む70歳の女性
  • 夫に先立たれてからは独り暮らし
  • 嫁いだ娘が首都圏に暮らしており、時々は孫の顔も見られる
発症の機序
  • ある日、買い物帰りにつまずいて転倒
  • 救急搬送され、右大腿骨頸部骨折の診断を受ける
入院後の経過
  • 手術 → 経過観察 → 地域包括ケア病棟へ → リハビリテーション・歩行訓練
  • 高血圧症と脂質異常があることも判明し、治療の必要があると判断
  • 地域包括ケア病棟の入院期限60日を前に退院が決定
  • 在宅復帰支援を行う医療相談員が退院後の包括的ケアを各所に要請
退院後の予定
<医療>
外来通院 → 高血圧症と脂質異常の内科的治療 2週間に1回
地域包括診療料を算定
訪問看護 → 自宅での服薬管理や定期的見守り 毎週1回
訪問リハ → 歩行訓練の継続 毎週1回
<介護>
訪問介護 → Aさんは要支援1と認定されたため、介護予防訪問介護
週に1~2回ヘルパーが訪問し、掃除や洗濯といった家事を援助

 この中で注目したいポイントは、「地域包括診療料」と「介護予防」の2つです。この2つはどちらも、地域包括ケアシステムの重要なキーワードとなっています。

「地域包括診療料」

 こちらは医療保険を使った「医療的ケア」です。この診療料は外来通院に設定されたもので、前回(平成26年4月)の診療報酬改定で新設されました。この算定にはいくつかの要件があります。

  1. 対象:高血圧症・糖尿病・脂質異常・認知症のうち、2つ以上を有する者
  2. 慢性疾患の研修を受けた担当医を決め、担当医が診療や指導を行う
  3. 診療上の指導や服薬管理を行う
  4. 健康相談を行い、健康診断や検診の定期受診を勧奨する
  5. 介護保険の相談を行っている
  6. 在宅医療を提供している
  7. 投薬に24時間対応している

 慢性疾患の専門的担当医が診ることを前提とし、しかも外来通院だけでなく、必要に応じて訪問診療や訪問看護といった在宅医療を提供できます。また健診を通して、恒常的かつ全人的に状態把握を行います。さらに介護保険との連携ができるだけでなく、急な投薬を含め24時間体制で対応可能な体制を敷いていることが要件となります。
 これが地域包括診療料の算定要件であり、それは地域包括的ケアの意味するところでもあると換言できます。つまり、「常に」・「全人的に」・「多方面から」、診たり見守ったりすることができる場合にのみ算定できるため、地域包括的ケアそのものといえるでしょう。

 この診療料を算定するためのハードルが意外と高く、身近に感じられるものとなるには相応の時間を要すものと思われます。しかし、「地域包括ケアシステム」の医療的意義を体現するための要素が詰まった診療料であるため、ここで取り上げました。

「介護予防」

 そもそも介護予防とは、要介護認定における「要支援」状態にある人のことを指します。要支援のケアプラン作成は、数年前に設置された「地域包括支援センター」が担うこととされていましたが、今年の介護報酬改定により介護予防全体が介護保険から切り離され、居住地の市区町村といった地方自治体が担当することとなりました(経過措置がありますので、今も介護保険を使っている自治体は多数あります)。

 「介護予防」とは、身体介護を必要とせず、多少の援助を受けるだけで日常生活を送れる人たちのことを指しています。「医療は早期発見早期治療が第一」という考え方と同様に、介護においても「この段階でしっかりしたケアと見守りをすれば要介護状態になることを防げる」という考え方が働いた結果生まれたのが、この「介護予防」であるといえます。

 地域包括ケアシステムは、「医療」・「介護」・「地域行政」が一体となり、「組織」・「役割」・「時間」の切れ目なく、全人的にケアする仕組みの総称です。この「地域包括」という用語は、医療や介護の様々な規定や場面で用いられます。例えば、「地域包括診療料」・「地域包括ケア入院料」・「地域包括支援センター」などです。今後も医療や福祉の制度改正などに関し、あらゆる所で目にするキーワードとなるでしょう。

 さて、モデルとしたAさんですが、【退院後の予定】にあるように、今後は地域包括ケアシステムによる様々なサービスを活用しながら、在宅での独り暮らしを送っていきます。

 次回動画コンテンツの中では、そんなAさんの日常生活を紹介し、地域包括ケアシステムの全容に迫っていきたいと思います。

【医療監修】
医療法人社団悠翔会
医師 理事長・診療部長
佐々木 淳