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「楽しく学ぼう!医療と福祉」みんなで支える地域包括ケア 第2回

 前回は、進行する一途の高齢化と膨張し続ける医療費の削減に向け、政府とりわけ首相官邸と厚生労働省がどういう施策を行おうと考えているのか、“骨太の方針2015(PDF)“などを例示して明らかにしました。そして、これからの高齢化社会を支えるために編み出された「地域包括ケア」という新しい仕組みについて、どのような制度なのかを簡単に紹介しました。
今回は動画コンテンツに登場しているAさんを例に、入院から在宅に向けた医療機関側の動きを中心に解説していきます。ぜひ動画コンテンツとあわせてご確認ください。

地域包括ケアシステムの全体像

 この地域包括ケアシステムですが、局所的な見方をしてしまうと全体像がつかめません。必ず、大きく高い視点から、正に“包括的な”見方をすることが重要です。そこでまず、Aさんの例で示す前に、次の図をご覧ください。

図:厚生労働省より引用
(図は厚生労働省より引用/URL:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/)

 実はこの図、たいへん重要な意味を持っています。この図こそ、政府の描く将来像を表現したものなのです。
 まず、以下の4つの括りに分けられている点に注目してください。

  1. 在宅(自宅・ケア付き高齢者住宅等)の高齢者
  2. 医療機関(医療保険でのケアを意味します)
  3. 介護施設(介護保険でのケアを意味します)
  4. 生活支援・介護予防(地域の福祉行政を意味します)

 この春の介護報酬改定で、「訪問介護」「通所介護」において介護保険が適用外となりました。
そもそも従来は、介護保険を利用しての介護サービスを受けるためには、「要介護認定」あるいは「要支援認定」のいずれかを受ける必要がありました。身体上または精神上の障害によって、要介護や要支援いずれかの認定を受けますが、この「要支援」という認定を受けるということは、「介護予防」が必要であるとみなされます。
今回の改定で、これまで「要支援」と認定された人は介護保険が適用できたのに対し、これからは市町村に「介護予防」の役割が移譲されることとなります。
これについて“運営主体である市町村に対し国は現状と変わらない給付を行う”としていますので、実質的には現行制度と変わらないはずです。しかしながら、運営主体が市町村に変更されるということは、料金やサービスの内容について、決定の裁量権が市町村に移るということでもあります。
 そのため市町村は、サービスの提供体制に関する方針決定も行うことになります。図にもあるように、政府は市町村が老人クラブや自治会などを通してボランティアを活用することをイメージしています。こうしたスタイルが確立されれば、予防給付の料金設定を低くする市町村が現れることもあるでしょう。
つまり政府は、このようにして市町村独自による創意工夫を促し、介護予防給付の独立性が上がることを期待しています。仮に政府の思惑通りに運ぶようなら、将来的には受けられるサービスの質や価格に、格差が生じるようなことも考えられるわけです。

介護における病院の役割とは?

 さて、この4つの括りにも、また図全体を見渡しても、「病院」という言葉が一つもないことにお気づきでしょうか?
現在政府は、病院ごとに請け負う「病床機能」の再編を10年計画で進めています。大まかに説明をすると、病院では「治療」を行い、介護やリハビリといった「治療後」に関しては地域包括ケアシステムで行うという仕組みをつくろうという動きです。
 在宅に移行した人の病状が急変したり骨折したりして入院加療を必要とした場合は、もちろん病院に通う、入院するなどして治療を行うことになります。しかし基本理念としては、治療が完了したら、また地域包括ケアシステムに戻るのです。

地域包括ケアシステムは入院中から始まる

 動画の中で紹介したAさんは、手術が終わってリハビリテーションを行う段階になったところで、「地域包括ケア病棟」に移ることとなりました。
 動画の最後にある「地域包括ケア病棟とは」でも紹介していますが、この病棟の特徴について、もう一度解説したいと思います。

<地域包括ケア病棟とは>

初期の治療を終えた後、追加治療やリハビリテーションを行う目的で新設された、入院料の新しい施設基準。自宅復帰することを前提としており、病棟に専任の医療相談員が配置され、入院中から退院に向けた準備を進める。
医療相談員は、地域包括ケアのコントロールタワーとして、退院後の医療と介護を切れ目なくケアするための調整を担う。介護保険の資格取得準備なども支援してくれる。

 尚、この病棟の入院日数には、60日という上限が設けられています。
 Aさんは、この地域包括ケア病棟で退院に向けたリハビリテーションをこなし、身体機能の回復に努めていくことになります。また同時に、病棟専任の医療相談員に援助してもらいながら、在宅復帰に向けた諸準備を進めていくことにもなります。
 高血圧なども心配されるAさんですが、これらは退院後の在宅生活に影響していきます。この続きは、また次回で解説していきましょう。